こんにちは!
大学受験エリートのSuuです。
高校数学の勉強法のポイント、見どころなどを紹介する
るるぶ高校数学のシリーズです。
今回は、
数B 数列 その12 数学的帰納法
です。
→前回
さて、いよいよ数列も最後です。
満を持して(?)、数学的帰納法が登場します。
今までにない、新しい証明法です。
そして、その威力は凄まじいの一言。
今まで証明できなかった、あるいは証明困難だった命題が、
非常に簡単に証明できるようになります。
この記事では、数学的帰納法のことを単に「帰納法」と書くことにします。
ポイント① 帰納法の原理をきちんと理解する
帰納法による証明は、
自然数nに関する命題P
に対して用います。
次の2つが示せたとき、命題Pはすべての自然数nで成立します。
【1】命題Pがn=1で正しい
【2】命題Pがn=kで正しいならば、命題Pはn=k+1でも正しい
まず、帰納法の原理をきちんと理解しましょう。
ドミノ倒しでも何でもいいです。自分好みの方法でOKです。
ただ、きちんと理解するためのヒントを紹介しておきます。
【2】はたくさんの命題をまとめたもの
【2】命題Pがn=kで正しいならば、命題Pはn=k+1でも正しい
を理解できるかどうがミソです。
この「A⇒B」型の命題は、次の複数の命題の集合体です。
n=1で正しい ⇒ n=2でも正しい
n=2で正しい ⇒ n=3でも正しい
n=3で正しい ⇒ n=4でも正しい
n=4で正しい ⇒ n=5でも正しい
n=5で正しい ⇒ n=6でも正しい
……
これが、無限に続きます。
無限にある命題を、文字kを使ってまとめて
【2】命題Pがn=kで正しいならば、命題Pはn=k+1でも正しい
と表現しています。
【2】で、一歩一歩証明していく
さっきの命題をもう一度眺めましょう。
n=1で正しい ⇒ n=2でも正しい
n=2で正しい ⇒ n=3でも正しい
n=3で正しい ⇒ n=4でも正しい
n=4で正しい ⇒ n=5でも正しい
n=5で正しい ⇒ n=6でも正しい
……
このとき、もしも「n=1で正しい」が証明できたらどうなるか。
n=1で正しい ⇒ n=2でも正しい
から、「n=2で正しい」と分かります。
すると、
n=2で正しい ⇒ n=3でも正しい
から、「n=3でも正しい」と分かります。
……
これ、ずっと続きますよね?
一歩一歩ですが、この一歩はずっと続いていきます。
だから、
「すべてのnで正しい」
と証明できるよ!
というのが帰納法の原理です。
(精密な理論付けは、ペアノの公理から従います。
高校生のうちは、「イメージ」が掴めてればOK。)
ポイント② 「過程」と「結論」を毎回書き出す
帰納法では、次の2つを示します。
【1】命題Pがn=1で正しい
【2】命題Pがn=kで正しいならば、命題Pはn=k+1でも正しい
このうち、【1】は簡単なことが多いです。
たいていは【2】の証明が問題になります。
(【2】が簡単で、【1】が大変な帰納法もあります。)
そして、習得が難しいのも【2】の議論です。
【2】で示すことは、
命題Pがn=kで正しい ⇒ 命題Pがn=k+1でも正しい
です。
「A⇒B」型を証明するので、【2】の証明は
仮定:命題Pがn=kで正しい
結論:命題Pがn=k+1でも正しい
という証明問題です。
ここは、中学校の頃の証明の基本に立ち戻りましょう。
仮定と結論を、上記のようにしっかり整理します。
必ずノートに書きだしましょう。
そして、
仮定→使っていい条件
結論→使ってはダメな条件
を意識しながら、仮定から結論を導きます。
少々面倒ですが、最初は必ず、仮定・結論を書き出していきます。
この訓練をしないと、帰納法が書けるようにならないと思ってOKです。
ポイント③ 具体的な例
ここは1つ、帰納法の証明例を出しましょう。
すべての自然数nについて、
1+2+3+……n=n(n+1)/2
を、帰納法で示します。
ピンクも文字で、補足を入れてあります。
【証明】
1+2+……+n=n(n+1)/2 ……①
を数学的帰納法で示す。
(特殊な証明のため、
「数学的帰納法で示す」と最初に断るのをオススメします。
その方が、採点者が読みやすい答案になります。)
(ⅰ) n=1のとき
左辺=1
右辺=1×(1+1)/2=1
よって、①は成り立つ。
(「明らか」で誤魔化さないように。
面倒でも、丁寧に「証明」をしてあげましょう。)
(ⅱ)n=kのとき①が成り立つと仮定する。 (k=1,2,……)
(仮定:1+2+……+k=k(k+1)/2
結論:1+2+……+k+(k+1)=(k+1)(k+2)/2
と、必ずノートに書き出します。
使える条件、示すべき条件を見比べて、
証明の方針を考えます。
この証明なら、
結論の左辺と、仮定の左辺が近い式である点に注目します。)
1+2+……+k=k(k+1)/2 ……②
このとき、②から
1+2+……+k+(k+1)
=k(k+1)/2 + (k+1)
(この変形で、帰納法の仮定②を使いました)
=(k+1){k/2+1}
=(k+1)(k+2)/2
よって、②はn=k+1のときにも成り立つ。
(ⅰ)、(ⅱ)から、①はすべての自然数nで成り立つ。
(証明終了)
教科書の型とは少し違うかもしれませんが、
この書き方で問題ありません。
ただ、最初のうちは
教科書や参考書のかき方を、そっくりそのままマネするのがオススメです。
数学的帰納法は、
「仮定」「結論」
を書き出して練習することが大切です。
ただ、この証明を習得するには
命題「A⇒B」の意味の理解
添え字の取り扱い
などの感覚が前提になっています。
表面上は新しい証明ですが、
その背景には、今まで数列で学んだ
「数学的な感覚」
が前提になっていることは注意が必要です。
最初は慣れませんが、繰り返し練習しているうちに感覚がつかめるハズです。
漸化式と同じように、
「一歩一歩」
に注目した証明法であることが感じられれば、習得間近です。
色々な命題を帰納法で証明して、感覚を掴みましょう。