大学受験エリートのSuuです。
この記事では、スタディサプリの映像授業について、
「オススメの視聴法」
「授業のポイント」
などを紹介していきます。
今回は、
トップレベル数学ⅠAⅡB 第42講
無理数の証明
です。
無理数の証明は、典型的な
背理法を利用する証明
です。
無理数の証明に限らず、
「結論が示しにくい命題」
の証明は、背理法を利用するのが定番です。
他の例で言うと、
「〇〇を満たすものはただ1つしかない」
ことを示すときも背理法がメインです。
背理法は他の証明と異なり、着地点が独特です。
「矛盾を導く」
というのが着地点です。
そのため、背理法を勉強するときには
「どういう矛盾を導いているのか?」
に注目しましょう。
こういう矛盾がある、こういうタイプの矛盾の出し方がある、……
という知識のストックがないと、
背理法を自力で使うのは難しいです。
とはいえ、ある程度は
「背理法の証明に触れる」
経験をしないと、背理法は使いこなせません。
気分は、作文の勉強に近いかもしれません。
正しい背理法に触れて、背理法の「お作法」を体感することも大切です。
余談
有名な「素数が無限にあることの証明」として、
『素数が有限と仮定して、
すべての素数p1,……,pn に対して
N=p1×……pn +1
を考える』
というものがあります。
このとき、2通りの話の進め方があると感じます。
「Nが新しい素数」に着地して、矛盾
「Nが合成数」なのに、素因数が見つからないことに着地して矛盾
どちらのルートの方が、背理法としてキレイなのでしょうか。
(個人的には、「どっちでもいい」と思っていますが。)
Chapter1
問題(1)の証明です。
「√7が無理数」
の証明ですね。
背理法の見本のような証明ではありますが、
それにしては少しややこしい証明です。
着地点となる矛盾は、
√7=m/l (m,lは互いに素な自然数)
とおいたのに、lとmが共通因数7をもつ
です。
そのため、議論の途中で示すべき内容は
mが7の倍数
lが7の倍数
の2点です。
この2点を、2乗して分母を払った
7l2=m2
の関係式から導きます。
上記のように、矛盾の着地点と、
そのために示すべき内容をしっかりまとめておきましょう。
そういう地道な分析が、背理法を習得するコツです。
また、堺先生も注意しているように、
「lとmが互いに素」
という内容がないと、綺麗に矛盾に落ちません。
その点も要注意です。
この部分、少し補足しておきます。
有理数は、
(整数)/(整数)
の形で書ける数のことです。
ここだけみると、
「互いに素」という話がどこから出てくるのか不思議かもしません。
ただ、少し考えてみると
(整数)/(整数)
は、分母と分子の「最大公約数」で約分できることに気づけます。
そして、「最大公約数」で約分したなら、
残る分母と分子は互いに素になります。
そのため、有理数は
互いに素な整数を使って、(整数)/(整数)を表せる
と考えてOKとなります。
(こういう分数を、「既約分数」と言ったりします。)
「互いに素」の背景も理解しつつ、証明をじっくり鑑賞すると、
√7が有理数m/lだとすると、
この分数は無限に7で約分できてしまう
というストーリーの証明だと見えてきます。
こういう感覚的なストーリーまで理解できると、背理法のレベルがグッと上がります。
せっかくなので、もう少し証明を分析・鑑賞するヒントを出しておきましょう。
「√6が無理数」のように、素数でない数だったらどうなるのか?
「√4が無理数」のように、有理数に対して同じ証明をしようとするとどうなるのか?
あたりも自分で考えてみましょう。
こうして、状況が違うケースでも遊んでみるのが大切です。
もしかすると、うっかり
「√4が無理数」
であることが証明できてしまうかもしれませんよ。
Chapter2
問題(2)の解説です。
対数の定義さえ分かっていれば、方針はすぐに浮かぶと思います。
逆に、「何をしたらいいのか分からない」と言う人は、
対数の定義をしっかり見直しましょう。
証明の最後で、
3m=5l
から矛盾を導くところは、もう少し丁寧に議論してもいいかもしれません。
なのですが……ここの部分は、
素数pがq1×……qnを割り切る
⇒素数pがq1,……,qnのどれかを割り切る
という素数の重要な性質が本質的な背景です。
(素因数分解の一意性を示すときに使うものです。)
そう考えると表立って議論しにくいところなので、
単に矛盾とするぐらいが適切かもしれません。
Chapter3
問題(3)の解説です。
5の3乗根が無理数であることの証明は、
√7のときとほぼ同じ流れです。
問題(3)で面白いのは後半部分ですね。
5の3乗根をαとするとき、
α3-5=0
α2+pα+q=0
という2つの関係式から、
〇α+△=0
を導くのがミソです。
αの1次式=0の形ですね。
このときに……
「多項式の余り付き割り算で、次数下げ」
が浮かんだら、本当に立派だと思います。
この解法を浮かぶのは難しいと思いますが、ヒントを言うなら
「多項式の余り付き割り算って、なんだろう?」
のイメージがしっかりしていると浮かびやすいと思います。
余り付き割り算の意味をしっかり見直して、色々と考えてみましょう。
ちなみに、ちょっと難しい言葉を使うと
この問題(3)の問題は
5の3乗根のQ上の最小多項式は、x3-5
という内容を証明しています。
最小多項式って何だよ……というのは一旦忘れて、
このあたりの議論が
ガロワ理論
の入口です。
なんとなく、
「ちょっと難しい理論の、入口をのぞいているんだ」
という気分だけ、味わっておきましょう。